“あなたのしぐさ”

    『初々しい二人へ10のお題』より

 


相も変わらず、気温も気候も落ち着きのない今日この頃。
暑かったり寒かったりが日替わりでやってくる乱高下も、
晴れたらずっと晴れ、降るならずっと雨という偏りようも、
冬の話か春の話か区別がつけられない、
同じようなテンションで続いてて。
色んなバタバタが起きるのに、暦は止めらんなくっての、
気がつけばもう七月になっており。

 「関東大会への予選も、随分と押し詰まって来たし。」

あれ? 押し迫るだったっけ?と、
ひょこり、小首を傾げたモン太だったのへ、
なんか大みそかの話みたいだねと、
苦笑を滲ませるセナだったりし。
大波乱と大試練と、
それからそれから大きな大きなトロフィーと思い出と。
泣いたり笑ったり、地団駄踏んだり歯を食いしばったり。
一体何年分だろかというほどの色々々があった昨年度、
見事“チャンピオン”という頂上まで上り詰めたお陰様。
今年は追われる身となっての、春の大会を消化中。
一番チーム数が多いらしい東京都の勝者を決める大会は、
諸事情あっての少し遅れて、今週末に決勝を残すのみとなり。

 「王城かぁ。」
 「ほんの1年前だったら、
  初戦であたってあっさり負けてたんだのにね。」

たった1年前のことなのにね。
雲の上の世界の話にも等しく思えていたはずが、
この人を越えたいと、
高校最強の進さんへ初対面の場で早くも思ったのみならず。
気がつけば、そんな進さんでも勝てないままだった、
クセだらけなチームとの死闘も制していた、
ずぶの素人集団だった自分たちであり。

 「何たってあのアメリカ縦断をこなした身なんだし。」

ただのビギナーズラックだと思ってもらっちゃあ困るとは、
当人たちより むしろ、引退してった先輩たちの口から出ているお言いよう。
そんなしてハードル上げさせて、
またしても自分たち初心者軍団へ発破を掛けようとしているものか、
……と思いきや、

 『妖一としては、
  夏の高校総体に種目を設けさせたくてっていう
  下心があるらしいよ?』

 『な、夏ですか?』

サッカーも野球もやるのに、
同じ球技だ出来ないはずはない、なんて。
そんなおっかないこと言って、
先々のアメフト人口もっと増やそう計画を
固めておいでの悪魔様であるらしく。

 『何たって、妖一の夢は、
  選手として暴れ回った後、
  日本に本場にも通用するリーグを作ることらしいから。』

そして、そこのコミッショナーとなって、
大好きなことで 人生全うしたいらしくてと。
どこまでホントか、そんな内緒話を置いてった、
ホワイトナイツのイケメン ワイドレシーバーさんは、
そちらは三年まで現役で頑張れるからと、
明日の決勝で直接当たる相手でもあって。

 「桜庭さんも脅威だけど、進さんだ、問題は。」

高見さんが引退したので、
桜庭へのエベレストパスは投擲する人がいない状態。
ならばまだ手の打ちようはあるとされてもいるが、

 「高校最強の看板は降ろしてねぇんだもんな、進先輩。」
 「そだねぇ。」

どんなに速かろと、どんなに頑健だろと、
今大会で彼を突破出来たランニングバッカーは、
今のところ皆無だそうで。
装備を付けていずとも、隆と盛り上がった筋骨の雄々しさと、
だっていうのに、風のように速くて鋭いタックルの切れ味と。

 「大体、あの馬力が凄げぇよな。」

アメフト選手にはそうそう長身を求められはしない。
ポジションによっては、
力、速さ、高さといった条件の、有利さ設定も違ってくるからで。
進もまた、ラインというポジションに適応してか、
さほど背丈があるではないはずだが、

 「うん。大きい人じゃないはずなのにね。」

真ん前へ立ちはだかれると、
何処を突いて抜けてきゃいいのかを見つけられないことが多い。
存在感から感じる威圧のせいか、
それとも真摯な気魄が伝わってくるからか。
セナほどの俊足でも、う…っと息飲み たじろぐこともしばしばで。

 「……と言いつつ、
  今んトコの対決で、飲まれたまんまになってた試しはないんだが。」

 「え?」
 「あ、蛭魔さん?」

大学への進学志望の身なせいか、
一応、部活からは引退した頼もしき先輩さんが、
クラブハウスへ顔を出して下さったものの、

 「何だ、お前らだけか?」
 「いやあの、期末テスト中ですし。」

ほほぉと目が据わったお兄様だったので、
きっとこれから…試験の方へ重きを置いた下級生部員たちへ
何かしら“説教”しに行く彼なのかも知れんと
おっかないことへの予測が立ってしまった部長副長コンビが
早々と震え上がったところで、

 『総体参加っていっても、
  エキシビション、公開試合扱いでいいんだよ。』

やはり本気で総体への参戦望んでたらしい悪魔様は、
とはいえ、そうそう性急な構えでいた訳でもないらしく。
そんな形ででもいいから、
日本でもメジャーなスポーツにしたいだけだと、
殊勝なご意見言ってたもんの、

 「装備がものすごいとは言え、
  サッカーみたいにずっとずっと集中しての
  90分駆け回る訳じゃねぇだろによ。」

プレイごとに立て直しだのスクラムの組み直しだのが挟まっての、
結構余裕もって展開しているスポーツなんだしと、
微妙に諦め切ってなさげなご意見を呈してから、

 「で。進のくせとか、思い出せたか?」
 「う………。/////////」

いつだったかの予選で、
少々卑屈な作戦、
プレイヤーの癖というものを利用し、
次の動作を予測して対応策を執り続けていたチームがあって。
まま、こちらにはそんな小細工ものともしない、
天才策士がおいでだったんで事無きを得たのだが。

 「悪い策でもないんだな、あれは。」

合理的じゃああっからなと、引き合いに出してから。
そこでだ…と、セナへと下った指令が、

  ―― 進清十郎のクセがあったら思い出せ

彼もまた一流のプレイヤーだから、
試合中に、次の動作を匂わせるような愚かなクセなど出しはしなかろ。
そこは重々判っている上で、

  普段の仕草にクセはないのか、と。

例えば、
セナが おっとっととつまずけば、どっちの手を出してくるかとか、
くすぐったいこと言ったお前の頭を、
ポンポンと軽く叩くのは、利き手でばかりなのかとか。

 「な…っ。////////」

そんなこと、なおさら試合には関係ないでしょうがっ。////////
 「それはどうかな。」

お前しか視野にないときに やらかすことには違いないんだ、
同じような反射が働くんじゃね?…と。
決勝を前に、
またぞろ何だかややこしいことを企んでおいでの策士様みたいだったが。

 「そんなそんな、クセなんてもの…。」

スタバのコーヒーとか、何でブラックで飲むのかといや、
あの小さなクリームの容器を潰さないで開けられないからだとか。
このところ、
朝のジョギングも一緒しないようになってたんで知らなかったんですが、
小さいランナーが同じ道を走ってるとついつい脇見をするそうで。
一昨日も危うくガードレールにぶつかりかかり、
咄嗟のこととて蹴り割りかけたとか…。

 「そのくらいのことしか思い出せなくて。」
 「……意味があるやら無いのやらだな、そりゃ。」

笑いをとりたいネタをとは言ってねぇぞと、
少々歯軋りものとなった蛭魔さんを、まあまあと宥めるモン太とて、
どういうネタを拾ってくるかなと呆れたのは同じこと。
大丈夫なんでしょか、二年目のデビルバッツ…。(う〜んう〜ん)




  〜Fine〜  11.07.02.


  *高校生Ver.のお話なので、
   お題ものとさせていただきました。
   とはいうものの、どこが恋愛模様のお話だろか。
   暑いから…ってだけじゃあないような。
   私の進さんへの把握は、
   年を追うごとに奇天烈になってるみたいです。

   少しでも涼しくと構えた背景でしたが、
   意味不明だったので交換しました。
   (第一稿では、でっかい波紋という涼しそうな写真でした。)
   春と秋は大忙しだが、夏は空いてるアメフトが、
   真夏の総体に種目として無いのも…無理はないというか。
   剣道部の防具どころじゃないあの装備を来て、
   しかも炎天下で…ってのは、やっぱり無理があるんじゃなかろかと。


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